naked blue

ちょっぴりえっちな恋愛小説のあるブログです。小説のみですが、仄かに一部R18となる大人な描写が散りばめられてます。


Happy Happy Birthday 38

「そりゃあね。流石に俺でもそれは余り良くは思わないな」
「だから――」
 ごめんなさい、とあたしは再びそう言おうとしたのだが、奏さんが口元に指をそっと当てられてその続きを遮られた。
「それが嘘だった場合ね。ひなと知り合う前であってもそれは事実なんだ」
「えっ?」
 あたしは驚いて顔を上げた。
 桜木谷君が言っていた事が本当に起きたこと?確か色んな女性との仲良く歩く姿を目撃してそれから――。
 だが、奏さんはその疑問に対してただ無言で微笑むだけであたしが求めたかったそれ以上の答えが出てくる事はなかった。
「さてと、帰ろうか」
「帰るって。デート、しないの?」
「そうだったね。何かここにくるまで大分話がずれてしまったけど、そもそも今日はデートの為に来たんだよね」
「じゃあしよ?」
 あたしは微笑んだ。手を重ねればすっぽりと隠れてしまう奏さんの大きな温かい手をぎゅぎゅっと強く握り締める。
 それに久し振りの奏さんとのデートなんだし。もうずっとしていないんだから今日は思い切り楽しまないと。今まで出来なかった分を今日一日で出来るだけ全てを取り戻していかないと。
「でもその顔で?」
「顔?」
 奏さんから思いがけぬ一言を受けてあたしは目をきょとんとさせた。
「メイク道具、持ってきているのなら何処か近くの化粧室に入って直しておいで」
「そんなに酷いかな?やっぱり」
 今は何も自分の顔を確認する術がないから出掛ける前、自分の部屋にある鏡を目の前にしてせっせとお洒落していた綺麗なところしか知らないあたしは不安にすらなってしまう。だが、自分の顔を何の力も借りずにこの顔が見られないそんな自分が少々もどかしいし、かと言って自分の顔をこの目で確認する手段もないからそこでほっとしている自分も確かにいる。何せ奏さんに指摘されるぐらいだからだ。その原因となった発端も勿論解っているが、余程酷くなければ何もそのように言われる事はない。そのせいか、鏡を目の前にして今の顔を見るのが少し怖かったりもする。
「ちょっと泣きすぎたね。化粧とか剥がれているとこもある」
 すると奏さんはあたしを握ってないもう片方の手で瞼の上から指腹でそっと触れてきた。
「お化粧道具なんか一つも持ってきてないよ。だってこんなとこで泣くなんて思ってもみなかったし」
「じゃあどうする?」
 奏さんが解りきった事を言ってきた。

to be continued...

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  1. 2008/02/23(土) 00:19:02|
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Happy Happy Birthday 37

「残念ながら人数は一桁だからひなにお手の物だって言えるようなレベルには満たないんだ。片方だけでも数えられるだけだから」
「じゃああたしと同じだね」
 あたしはにこっと笑った。
 あたしは奏さんが初めての彼氏さんだけど。ずっと女子しか知らない生活で、同年代の男子なんか誰もいなければ全く知らない環境でずっと過ごしていたあたしに漸く訪れた本当の春。
「実はそれがきっかけだったんだよ、バイトを一つ増やしたのは。そのせいでドタキャンデートが立て続けに起こった理由」
「そうだったんだ。そんな理由があって。 だからって奏さんが何も無理なんかしなくたっていいんだよ。あたしなんかの為に。奏さんが全部自分一人でやってるって事はあたしも知っているんだし」
「でも、初めて俺と迎える誕生日なんだし、ここは少しでも奮発しないと。今までひなをほったらかしにして寂しい思いばかりさせたんだから」
 ごめんな、と耳元でぽつりと囁いた奏さんの優しい声に背筋がぶるっと震えてあたしは首を大きく振った。それは一生克服できないあたしの大きな弱点。あたしはもう奏さんの一言一言に身も心も蕩けてしまう。
 もう全部許しちゃうよ。
 でもここで今まで奏さんにほったらかされて寂しくなかったと言えば決して嘘になるのだが。それに不安ばかり募っていた生活を送っていた程だし。この日まで何も知らなかったとはいえ、奏さんを少しでも疑っていた自分が本当に恥ずかしかったのは言うまでもなかった。奏さんはあたしの為にデートも全て蹴ってまでこの日を迎える為に一人頑張ってバイトに精を出していたというのに。
 あたしこそごめんなさい、奏さん。疑ったりなんかしてごめんなさい、とあたしは心の中で奏さんに向かって謝った。
「――でも、あの彼がまさか知っているとはね」
「えっ?それって――」と、眉間に皺を寄せて何処か複雑な表情をしていた奏さんを見て、一瞬あたしは嫌な予感がした。
「聞いていたよ。彼、色々と俺の事を言っていたよね」
「あっ、それ、聞いていたの?」
 あたしは何だか罰が悪かった。そこに本人がいるとも気付かずに桜木谷君が色々と奏さんを侮辱するとも取れる発言ばかり繰り返してそれをあたしが一言も止めようとはしなかったから。
「そりゃあひなの跡を追って捜していたから」
「ごめんなさい、奏さん」
 あたしは頭を深々と下げて謝った。きっと一回謝っただけでは到底許されるような事じゃないが。
「何でひなが謝るの?」
「だって……。本人がいないからってそういうのはやっぱり…。悪口とか言われると誰だって気を悪くする事だと思うし」

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  1. 2008/01/15(火) 23:43:34|
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Happy Happy Birthday 36

 嵌められた。
 一方であたしを罠に仕掛けて見事成功した奏さんは抑えられずに口元に浮かべた緩みを隠し通す事が出来なかった。
「奏さん、意地悪だ」と、奏さんの手の平でころころと転がされてしまったあたしは脹れてぷいっと機嫌を損ねた。
「それならそれでもいいよ、俺は。ただ手間が省けるだけだし。ねぇ、ひなはもう俺から何も訊きたくはないの?」
 ここは奏さんの方が一枚上手だった。身長差を利用して屈んでくるとそれはじぃっと瞬きせずにあたしの顔を覗き込んでくる。
 あたしは胸がどきりとした。奏さんの瞳の奥にあたしの顔が映っているのが解ったほどの至近距離であったから。もしかしたらまたしてくれるのかな?ってありもしない事に内心ドキドキすらしてきたが、奏さんはあたしの反応にも慌てずに至って冷静な反応だったから逆にあたしの方が慌ててしまった。
「やっ!聞く!聞く!だってあたし、色々と聞きたいもん!」
「でしょ?だったらそう言わないの」奏さんはくすっと笑ってぽんぽんと頭を優しく撫でてくれた。「彼女はね、バイトの子なんだ」
「バイトの?姶良が言ってた子って。でも何で奏さんと一緒にいたの?偶々街中で出くわしたとか?」
「それは違うよ。ひなと逢う前にちゃんと待ち合わせしてね、プレゼント選びを手伝って貰ったんだ」
「プレゼントって何の?」
 あたしは首を傾げた。すると奏さんに素で笑われた。
「そりゃあひなにだよ。俺がひなにあげるプレゼント。第一俺があげる人の中でひな以外に他に誰がいるっていうのさ」
「あたし以外にも自分にプレゼントって事もあるじゃない」
「あーっ、それもありか」奏さんは純粋に納得した。「でね、俺ってさ、普段からそういうのとかあげた事が殆どなくて女の子の趣味とか全然判らないから色々アドバイスとかして貰おうとバイトの子に頼んだけどさ、何せ色々とバイトしてる身だからなかなか互いのスケジュールが合わなくて結局今日になってしまったというわけ」
「それを姶良に見られてあたしの耳に伝わったんだ」
「そういう事だね」ふむ、と奏さんは頷いた。
「でも何か意外」
「どうして?」
「奏さんならプレゼント選びとかお手の物だと思った」
 そんな誰かと一緒に選ぼうとする真剣な姿が何か想像できなくて。奏さんなら誰かに頼らなくても何でも一人でやれそうだとあたしは一方的にそう思っていた。あたしが奏さんと付き合う前にも色々と噂とかあったのを聞いていたからやっぱりそういうのも慣れているんだとばかり思っていたけど。でも案外そういうのって聞いてみないと判らない部分なのかも知れない。それは意外とも言える一面を今日初めて知った。奏さんはただ何とも言えない表情を浮かべていたが。

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  1. 2008/01/11(金) 00:22:34|
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Happy Happy Birthday 35

「さて、歩きながら色々と状況を整理していこうか。今まで訊けずにいたけどきっとひなも色々と俺に聞きたい事とかあると思うし」桜木谷君と別れてから最初に口を開いたのは奏さんからだった。
「うん。いっぱいあるよ」と、はっきり言うと奏さんは口元に苦笑いを浮かべていた。
「あ、やっぱり?」
「多分そういうのって訊こうと思えば訊けたのかも知れないけど、ただね、あたしには奏さんに訊けるような度胸が全くなかったから。あの時はあたしが色々と問い詰めたらきっと奏さんにはウザイ娘だなって思われてしまって嫌われたくなどなかったから敢えて避けていた話題だったけど」
「もしもその時に問い詰められても俺はきっと答えようとはしないけどね。その時に言ったら本当に意味ない事だから。後の楽しみ半減」
「奏さんなら上手くはぐらかすの上手そうだもんね」と、あたしはちらりと奏さんを見ると態と皮肉ってみた。
「ひな、それって褒めてる部類に入るんだよね?」しかも真顔で言ってくるし。
「奏さんがそう思うんならそうなんじゃないの?あたしに態々訊かないでよ」
 人の皮肉も全ていいように捉えてしまうからあたしは面白くなくなってつい顔をぷいっと背けてしまう。
「じゃあ褒めてるって事にしておこうか」
 くすくすと隣で小さく笑っている。あたしもつられるように笑った。
 重なり合う二つの笑い声。
 きっと気付いているんだろう、その意味を。それは奏さんなりの優しさ。
「でもそれって何でも答えてくれるの?」
「ああ。だから何でも遠慮なく言ってもいいよ。俺、ひなの訊きたい事には何でも答えるから」
 男に二言はない、と奏さんが断言してきたからそこでほっとしたあたしは最初の質問をぶつけてみる事にした。まだ明らかにされていない以上、今一番気になる事だ。それはあたしのみが許される席に唯一座ってきた見知らぬ人の存在。
「じゃああの、姶良が言ってた奏さんの隣にいた人って?それって姶良の見間違いなんかじゃないんでしょ?」
「やっぱりそこから〜?」
 すると口元をにやっとさせてきたのであたしは慌てて首を横に大きく振った。
「い、いや、あっ、あのね、奏さんが喋りたくないのなら何も無理して喋らなくてもいいよ」
 ぼっと顔が真っ赤かになって更に動揺中。
 やっぱり奏さん、気付いたかな?それが少しであってもあたしの知らないその人が奏さんの隣に立って一緒に仲良くしていた事を想像してあたしがちょっぴりヤキモチなんか焼いちゃったりしたのを。
「別に大丈夫だよ。ひなの訊きたい事に答えるって言ったのは俺だし。ただちょっとからかってみたくなっただけ」
 あたしは瞬時に悟った。

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  1. 2008/01/05(土) 00:07:11|
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Happy Happy Birthday 34

 あたしはさっきからずっと頭の中でぐるぐると回想を繰り返していた。さっき奏さんが桜木谷君の前で言った言葉の数々を何度も何度も次々と思い返している。今はもうそれしか考えられない。あたしの耳元でくすぐったい奏さんの声から出てきたありのままの気持ち。
 あたしは一人ぽーっとしていた。頬を赤く染めて意識が半ば朦朧中。あたしは今でも夢心地な気分に浸っている。ほんと今でもこれは現実じゃなくてあたしが見ているいい夢のような気がして。それは何か一生分の運を使い果たしたような気分。夢=現実が実際に結び付くなんてとても考えられなかったから。
 でも、それは紛れもない現実だった。あたしが夢にまで見たすらすらと絵に描いたような憧れではなく、現にここに存在している。それはあたしの隣に今も奏さんが消えずにちゃんと側にいてくれるから。
 あたしはそっと横顔に視線を送った。奏さんは真っ直ぐ前を見詰めていてあたしの視線には気付いていない。この一年、奏さんからの告白で付き合い出してからあたしはずっと直ぐ間近で奏さんを独占している。ここにいるのはあたししか許されないところ。芸能人なんか目じゃないぐらいかっこいい奏さん。奏さんは何処にいようと必ず目立ってしまう。特に女の子とかが。街にいると必ず小さな声を揚げてくる。側にあたしがいるというのに初めからあたしの存在なんか全くないみたいなそんな扱い。そんな彼の彼女だよという誇らしげな半面、ちょっぴりジェラシー。
 あたしをもう二度と離さないようにずっと握り締められている奏さんの手。力強くその手の内にあるものを粉々に壊さないように。あたしは再度確認した。確かに奏さんの手があたしの手を強く握り締めてくれている。この手が離れてしまったら離れ離れとなって壊れてしまうのを恐れて離してはくれない。
 奏さん、気付いてるのかな?それとも態とやってるのかな?何だかこういうのってあたしとの関係を見せ付けてるみたい。
 何か恥ずかしい。人前でされると。あたしがしゅんと大人しくしていても奏さんは立っているだけで人の視線をあっという間に集めてしまう人だから常に所々から人の痛い視線をちくちく感じながら手を握られるのは。
 でもぎゅっとされて安心してくるあたしがそこにいる、何故か不思議と。キスや抱擁とはまた違った小さなスキンシップはやっぱり嬉しいもの。そこが人前であっても誰か大切な人と触れ合う事の出来る手段。互いに手の平を合わせて指と指で一つに結ばれるように絡めていく。不思議とさっきまで冷たかったと感じていた手に少しずつ温かみが増してくる。その温かさに直ぐ溶け合わさってゆっくりと一つに一つに――。互いの肌を合わせる事で失いかけていた小さな火がぽっと灯ってくる。
 あたしは時折ちらちらと目をきょろきょろ押したり引いたりと動かしてさり気なく頭一個分は高い奏さんを見詰めているとそのじっと注がれてくる視線に気付いて奏さんはふっと優しげな微笑を返してくれた。
 それ…反則。
 あたしは恥ずかしくなって咄嗟に視線を逸らしたが、その代わりに握られた手の力を少し強めた。

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  1. 2007/07/14(土) 23:53:07|
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